札幌の電話帳をみると「アカシア」と名乗る商店・会社が40件くらいある。ライラックと競って「まちの木」から漏れたとはいえ、アカシアはやはり札幌を代表する木だ。
原産地は北米東岸、明治初年この木が日本に渡ってきたときの当て字が「明石屋」だったというから面白い。明治14年東京青山の開拓史試験場から苗を移し、同18年停車場通りに植えられたのが札幌のアカシアの始まりである(札幌市史)。

アカシアの写真
札幌でアカシアの花が咲き始める6月半ばころの平均気温は16℃、花盛りは夏至の前後で17℃である。本道と比較的気候の似ている長野県でこの花が咲くのは5月下旬だが、そのころの長野の日平均気温がちょうど16から17℃だ。サクラ前線が日平均気温10℃とともに北上するように、アカシアの開花は日平均気温16から17℃と関係が深いようだ。
この関係が諸外国にも当てはまるかは疑問だが(日平均気温が同じでも、大陸では昼と夜の気温差が日本より大きいので)、参考までに各地の日平均気温16から17℃のおおよその期日をみたのが表1である。
表1:気温から推定されるアカシアの開花時期
| 都市名 | 5月平均気温 | 6月平均気温 | おおよその開花時期 |
|---|---|---|---|
札幌 |
12.0℃ |
16.1℃ |
6月中から下旬 |
長野 |
15.7℃ |
19.6℃ |
5月中から下旬 |
パリ |
13.3℃ |
16.4℃ |
6月上から中旬 |
ベルリン |
13.6℃ |
17.6℃ |
6月上から中旬 |
モスクワ |
12.4℃ |
16.8℃ |
6月中から下旬 |
長春 |
15.0℃ |
20.0℃ |
5月中から下旬 |
ポートランド |
14.1℃ |
17.2℃ |
6月上旬 |
ボストン |
14.7℃ |
20.0℃ |
5月下旬 |
表から気づくように、パリ、ベルリン、モスクワといった札幌より高緯度の都市、なかでも北緯55度のモスクワの開花時期が、札幌と同じくらいなのに驚かされる。お隣の長春、瀋陽にいたっては半月から1ヶ月も早く、北米大陸と同じ傾向がみられる。
大陸の気温は、5月から6月の夏至に向かって急上昇する。英語のMid-Summerに「夏至」の別訳があるように、頂点に達した太陽はこの日を境に引き返し始める。これを食い止め応援するように祝火を燃やし、農耕と家族の安寧を祈り、悪霊を払う習わしが「夏至祭」である。
日本に夏至をMid-Summerとする感覚はない。これはこの時期がちょうど梅雨にあたるからで、夏至にちなんだ行事もほとんどない。この意味でも、夏至に満開になる札幌のアカシアは貴重な観光資源だ。
中国では、この花をテンプラにして食べるというが、実際食べてみると、香り、歯ざわりとも、この季節の野草のテンプラに比べそん色ない。札幌の初夏の名物としてはどうだろうか。
(作成)文・資料とも柏原辰吉氏,平成10年
Copyright(C) 1999-2003 Sapporo Information Network Co.,Ltd. All Rights Reserved