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データで見る札幌の気象:No.3

春は風に乗って

春を呼ぶ風

「春一番」というのは、立春から春分までの間で初めて吹く強い南風のこと。キャンディーズのヒット曲「春一番」ですっかり有名になり、最近ではごく当たり前のように使われているが、北海道にはあまりなじまない。

春分前、札幌でも強い南風の吹くことはある。しかし、これを一般に「春一番」といわないのは、このあと大抵冷たい北西の季節風が吹き返し、冬に逆戻りすることが多いからだ。しかし、4月に入ると事情は少し変わってくる。

大陸気温の急上昇により、さすがのシベリア高気圧も衰えはじめ、一方、南の高気圧は北上の気配を見せる。この交替期に現れるのが、中国東北部から北海道付近を通る強い低気圧で、この後面から流れ込む大陸育ちの乾燥した空気が札幌の春風の主役となる。

戦前は馬糞(ふん)風という異名もつけられ、戦後モータリゼーションの発達とともにスパイクタイヤが削った粉塵を巻き上げたのもこの風である。本州方面の「春一番」とは少し意味が違うが、札幌にとってこの風はやはり春を呼ぶ風なのである。

図1:月平均風速と日最大風速8m/s以上の出現日数の年変化

図1:月平均風速と日最大風速8m/s以上の出現日数の年変化(棒グラフは古い資料)

図1は、札幌の風速の年変化を見たもの。折れ線グラフは1月から12月までの各月の月平均風速の変化、棒グラフは紙切れが飛び交い、木の枝がゆれはじめる日最大風速8m/s以上の日数である。観測機器の違い、測定位置(高さ)に差があるので、棒グラフに用いたデータは少し古いが、両資料とも4月・5月が他の月に比べ圧倒的に強いのがわかる。

そのうえ雨が少なく乾燥の季節ときているから、馬糞や粉塵が舞うのも当然である。

札幌の風

本章のタイトルで、風は定まりないもの、当てにならぬものとしたが、一方、風習、風俗、風紀のように、しきたり、ならわし、きまりの意味にも使われる。「水は方円の器に従う」ということわざを引用するならば、空気は地形によって向きと速さが決まるといってよい。

地図を開いて道央部(北海道の札幌付近)の地形を眺めると、石狩湾から勇払原野にかけ、ほぼ南北に連なる低地帯、いわゆる石狩低地帯(石狩地溝帯ということもある)が目に付く。札幌はこの低地帯の西縁、北部に位置するが、石狩低地帯に流れ込んだ空気は、西と東の山地に行く手を遮られ、主に南北方向の動きをするようになる。これが札幌の風の第一の特長である。

図2:札幌の四季の風配図(風向別出現率%)

図2:札幌の四季の風配図(風向別出現率%)※図の中心円の数字は静穏(無風)の出現率

図2は、札幌の四季を風向を風配図の形で見たものだが、四季を通じて南東と北西の風が目立っている。気象台の位置が石狩低地帯の中心から外れており、藻岩山などの影響もあって南北方向からずれているので注意。

札幌の風の第二の特徴は、昼は北西、夜は南東の風が多く、意外と海陸風の目立つ街であることだ。この特徴は四季にわたっており、特に弱い風のときにこの傾向が強い。東寄りと西寄りの風はほとんど吹かないが、春先、発達した低気圧が樺太(サハリン)方面を通るとき、手稲区や北区の一部で”おろし”に似た強い南西風の吹くことがある。

なお、市内で最も風が強いのは、石狩低地帯の中心に近い東区と厚別区で、中央区、西区はこれに比べて弱い。

(作成)文・資料とも柏原辰吉氏,平成10年

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